大気環境学会誌
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中国南部における1991~1995年の酸性雨と気象因子の解析
李 萌堂笠原 三紀夫
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1998 年 33 巻 1 号 p. 50-59

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抄録

1991~95年の5年間における中国南部地域での降水の年平均pH値の分布やpH値が5.6以下となる酸性雨の発生頻度について調べた。酸性雨が最も深刻な地域は, 中国南部の中心付近に位置する四川盆地, 貴州, 湖南, 江西 (SGHJ) 地域である。SGHJ地方における雲や風降雨などの気象状況についてまとめ, 酸性雨の発生過程について考察した。
最も低い年平均降水pH値は3.8であり, また数都市で酸性雨の発生頻度が90%を越えた。エネルギー消費量はSGHJ地域よりもむしろ沿岸地域の方が大きい。酸性雨の原因としてはSO2の排出量が第1の要因ではあるが, 雲量や湿度, 弱風といったような気象因子も, SGHJ地域の酸性雨に深く係わっていると考えられる。年平均の雲量は酸性雨の最も深刻な四川盆地や貴州地区が最大である。SGHJ地域の年間降雨量は1200~1600mm程度で, 2000mm近い沿岸地域と比較すると若干少ないが, 降雨日数は沿岸地域よりもむしろ多い。またSGHJ地域の風速や風向あるいは地形条件は, 地域外への汚染物質の拡散に適しているとはいえない。

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