大気環境学会誌
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路側帯生態系による幹線道路の窒素酸化物除去効果と土壌組成の制御による効果向上の可能性
樋口 能士遠藤 淳畠中 照史西田 耕之助
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1998 年 33 巻 4 号 p. 224-238

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抄録

ガス状窒素酸化物 (NOx) の自然浄化に寄与する可能性が高い場所として, 環境中で比較的高いNOx濃度に曝露されている, 幹線道路の路側帯生態系に着目し, NOx浄化効果について評価した。路側帯の植物および土壌へのNOx沈着効果を個別に評価することを目的に, 新たな乾性沈着モデルを提案し, フラックスの推定に用いた。
幹線道路における調査では, NOx排出強度推定のための交通量調査, NOx乾性沈着フラックス推定のためのNOx濃度分布調査およびチャンバー実験, 湿性沈着フラックス測定のための降水調査, 土壌に沈着したNOxの挙動を調査するための土壌NO3-モニタリングを行った。
室内実験では, グリコースおよび硝酸カリウム (KNO3) を用いて, 路側帯土壌の組成を調整し, 嫌気条件 (N2) および好気条件 (Air) でNOx曝露を行った。NOxの曝露は, 1日1回30日間の長期曝露と, 5分間隔の断続的な短期曝露の2方法にて行った。
調査対象の路側帯におけるNO2の乾性沈着フラックスは, NO2排出強度の1/1000と低く, 更に, NOの乾性沈着フラックスは, NO2沈着フラックスの1/20~1/200と極めて低く評価された。ただし, 土壌が植物と同等以上のNOx沈着効果を有している状態が, NOx乾性沈着モデルおよびチャンバー実験の双方で確認された。更に, 適切な土壌水分がNO2沈着効果を増大させる可能性が指摘された。また, 土壌が嫌気状態にあり, かつ有機物の豊富な条件下で, NOの除去が促進されたことから, 脱窒反応がNOxの除去に関与している可能性が高いと考えられた。

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