大気環境学会誌
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中部山岳地域における粒子状二次汚染物質の挙動
薩摩林 光佐々木 一敏鹿角 孝男鹿野 正明太田 宗康栗田 秀實村野 健太郎畠山 史郎烏谷 隆植田 洋匡
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1998 年 33 巻 5 号 p. 284-296

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抄録

山岳地域における浮遊粒子状物質 (SPM) の中のSO42-, NO3-, 有機炭素 (OC), シュウ酸などの二次粒子の挙動について解析した。SPMの捕集は中部山岳地域の八方尾根で1ヵ月毎に通年で行い, その化学成分 (水溶性陽, 陰イオン, 炭素成分, 金属など) を測定した。
八方尾根 (標高1850m) におけるSPM中の主成分はSO42-であり, SPM総重量の20%も存在していた。他の主要な成分はOC (SPM総重量の8.3%), NH4+ (5.2%), 元素状炭素 (EC) (4.4%) であった。
SO42-濃度は4月~7月に高く, 10月~3月に低くなる季節変化を示した。この変化はオゾンやT-NO3 (総硝酸, ガス状+粒子状) とほぼ一致し, 光化学反応により生成したSO42-が輸送されていた。また, SO42-の一部はNH3などのアルカリ成分により十分中和されることなく, 硫酸ミストやNH4HSO4などの酸性粒子として輸送されてきたことが判明した。これらの大気汚染物質は日本国内以外に大陸からも長距離輸送されたと考えられる。
T-NO3, OCおよびシュウ酸濃度もSO42-濃度との間に高い相関が認められ, これらの成分は光化学反応により生成したと考えられる。また, 4月~8月における二次粒子 (NH4+, nss-SO42-とNO3-, およびOCの一部) はSPM総重量の23%以上存在していた。

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