1998 年 33 巻 6 号 p. 335-343
酸性化した降雨・ミスト・霧などの湿性沈着物質や, ガス状・粒子状の硫黄酸化物・窒素酸化物などの乾性沈着物質が土壌に負荷された場合の影響として, 土壌酸性化の影響が考えられる。土壌酸性化影響の一つとしてA1の影響が想定されるが, Aiの影響は塩基類の濃度によって影響を受けることから, 主要塩基の一つとしてCaの影響について検討した。
水耕培養液のCa濃度を0.4, 0.8, 1-6の3段階, Al濃度を0, 1, 2および5mMの4段階に設定して, スギとヒノキを14週間栽培し, 生育に及ぼすA1の影響発現に及ぼすCa濃度の影響について検討した。スギおよびヒノキとも, Ai濃度が5mMになると顕著に生育が抑制された。一方, 検討した範囲のCa濃度レベルでは, スギの生育やA1の影響発現に対して有意な影響を与えないことが明らかとなった。
これまでに実施したスギ, ヒノキ, サワラを対象とした様々な水耕栽培実験の結果をもとにして検討した場合, わが国固有のこれらの針葉樹に対して, Alの影響が発現し始める濃度は2mM以上, Ca/Alは1以下,(K+Ca+Mg)/A1は5以下であった。また, 生育が20%抑制されるCa/Alは0.25, (K+Ca+Mg)/Alは1であった。