大気環境学会誌
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建物近傍拡散の予測に関する基礎的研究
その1 風洞実験
老川 進石原 孟安田 龍介西村 浩一長谷 実
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1999 年 34 巻 2 号 p. 123-136

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抄録

建物近傍の大気汚染物質の拡散予測に関する研究を行った。本論文その1では, 一辺が12cmの立方体を風洞に設置し建物近傍の流れ場と拡散場の計測を行った。流れ場の計測は, 乱れのレベルが高くかつ逆流を伴う流れ場の計測が可能なスプリットファイバープローブを用いた。拡散場の測定は, 屋根面の2つの異なった位置に設置した排出口からトレーサガスを排出し近傍の濃度を測定した。
流れ場の性状において, 建物背後に大きな逆流域が形成され建物の中心から建物高さの1.6倍の距離に再付着点が生じており, この領域に横方向から建物に回り込む流れおよび鉛直方向での下降流が形成されていることが明らかとなった。建物屋根面の流れの剥離に伴う大きな乱れが, 建物の直後の屋根面と側面の位置するところに生成されている。速度成分u成分では, 下流においてもこの乱れの大きな領域は保たれる。一方, 速度成分υおよびwの乱れの大きな値の領域は, 下流ほど建物高さ以下の範囲に拡がり, ピーク値の位置も低くなる。
拡散性状では, 屋根面の風下コーナーに位置する排出口の場合, 建物直後の断面で顕著なピークが建物高さに形成される。そのピーク位置は, 排出口位置を反映し流れの中心から偏った位置に生じているが, 風下ほどこの偏りは小さくなる。屋根面の中央に位置する排出口の場合は, 建物背後の近傍で風下コーナーに位置する排出口よりも小さな濃度値を示す。これは屋根面の初期拡散の状況の差違による。

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