長崎県南東部の雲仙野岳 (標高1,142m) で1989年8月~11月にかけて, O3, SO2, 気象要素とエアロゾルの同時観測を行った。観測期間中には阿蘇火山の活動が激しく, 阿蘇と桜島からの火山プリュームに起因すると考えられるSO2の高濃度を観測した。観測結果を10μgm-3以上のSO2の高濃度が表れた22事例について, 高層気象データとトラジェクトリー解析かちそれらの起源を推定した。その結果, 9事例の起源は桜島の火山ガスであり, 残り12事例の起源は阿蘇火山のガスであると考えられた。
九州域の火山起源のSO2, SO42-が観測された場合には, SO2→SO42-への粒子化率は0.01~0.51の範囲に入り, 上記の22例中18ケースが0.35以下であった。
SO2濃度が2.5μgm-3以下で上記のような火山ガスの影響がないと考えられる期間でも一定の濃度のSO42-濃度 (平均値で5.1μgm-3) が観測された。トラジェクトリー解析の結果から, それらは大陸起源であり, 九州地域のバックグラウンドSO42-濃度レベルには大陸起源のSO42-の存在が重要であることを示唆していた。