大気環境学会誌
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降水中の揮発性有機化合物濃度とその支配要因
井川 学中田 典秀大河内 博
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1999 年 34 巻 3 号 p. 211-218

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抄録

揮発性有機化合物 (VOC) の降水中濃度についてはこれまでほとんど知られていないことから, 大気試料および雨水試料の分析を行い, これらの濃度の支配要因について検討した。雨水試料については自動雨水採取装置により, 大気試料については連続大気サンプラーにより吸着捕集した後, それぞれをパージ・トラップ法あるいは加熱脱着法によって, ATD-GC/MSにより分析した。得られた分析結果によると, VOCの濃度変動は大きく, ジクロロメタン等はわが国の水質汚濁に係わる環境基準において定められている基準値に近い値まで降水に含まれることがあることが示された。大気中のVOC濃度は, 成分によっては相互に高い相関が見られたが, 降水中VOC濃度間の相関はこれに比して低かった。降水中VOC濃度には無機イオンで見られるような降り始めに高い濃度を示す傾向は見られず, 降雨強度にも依存しなかった。このことはVOCが主に雲内洗浄により雨水に取り込まれることを示唆している。また, 大気中VOC濃度と雨水中VOC濃度との間の相関は成分により異なり, 1, 2-ジクロロエタンやm, p-キシレンでは高い値を示した。

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