大気環境学会誌
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大気汚染ガスが植物のLIFスペクトルと蛍光の葉内分布に及ぼす影響
峰内 健一高橋 邦夫立本 英機
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1999 年 34 巻 6 号 p. 445-456

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抄録

植物葉のUVレーザ光による誘起蛍光スペクトルは, 植物の生育状態, 植物種や各種ストレスによって変化する。この特徴を応用したLIF法は, 植物の生育状態をリモートセンシング的に測定できる有効な方法である。葉外に放射されるLIFスペクトルは, 葉内の蛍光分布と密接に関係している。このためLIFスペルトルを測定するLIFシステムと葉内の蛍光分布を測定するMFIシステムの開発を行い, これらの装置で, まず緑色葉のポトスとクロロフィルを含まない斑入りのポトスを用いてクロロフィルの赤色域の蛍光とフェノール類等の化合物による青緑色の蛍光の関係を調べた。緑色葉においては赤色蛍光が葉肉細胞に, 青緑色蛍光が表皮細胞のみに見られた。また, 斑入りのポトス葉では, 青緑色蛍光が葉肉細胞内にも見られた。更に, 大気汚染物質のオゾンガスと自動車の排気ガスを暴露した落花生葉では, 青緑色の蛍光が葉肉細胞内にも見られた。青緑色蛍光とクロロフィルの赤色蛍光の関係を蛍光強度比 (F450/F687) を用いて調べた。その結果, 落花生の正に葉では, F450/F687が葉肉細胞内で急激に減少したが, 大気汚染物質に暴露した落花生葉では, F450/F687が葉肉細胞の更に内部まで見られ, 減少の割・合も緩やかであった。このことにより青緑色の蛍光は, 葉肉細胞内でクロロフィルにより再吸収・再利用されていることが分かった。更に, 本研究より葉内の蛍光分布は, 葉外に放射されるLIFスペクトルに影響を与えていることが明らかになり, この測定方法が, 植物の様々なストレスによる影響を調査する上で有効なものと成り得ると考えられる。

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