大気環境学会誌
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酸性雨原因物質の排出制御に関する研究 (IV)
中国重慶市におけるバイオブリケット生産のためのバイオマスに関する研究
高 世東坂本 和彦董 旭輝王 璋村野 健太郎畠山 史郎王 青躍
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2001 年 36 巻 2 号 p. 78-87

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抄録

バイオブリケットは70-85%の石炭と15-30%のバイオマスとの混合物に硫黄固定剤を添加して, 何らの粘結剤を添加せずにロール型プレスによって高圧で圧縮成型し, 調製される複合固体燃料である。本研究の調査結果によれば, 重慶地域における農作物の藁や茎の廃棄物および大鋸屑などの木材廃棄物は極めて豊富であり, バイオブリケット生産の副原料であるバイオマスとしての年間総生産量は1,800万トンに達しており, わずかにその5%を使用すれば, 年間36万トン程度のバイオブリケットが生産でき, 民生用エネルギーとして十分であると考えられる。従って, 重慶の酸性雨汚染防止対策の一つとして, 民生用バイオブリケットの製造技術を行う場合の副原料であるバイオマス原料はかなり豊富であるといえる。
重慶市で採集された農産廃棄物, 木材廃棄物および食品製造廃棄物の燃焼試験の結果は, バイオマスの種類によってその燃焼性硫黄分は異なるが, いずれも少なかった。バイオマス燃焼からのHCI, SO2の排出量は少なく, 1kg当たりの排出量はそれぞれ35-912と52-1764mgの範囲であった。原炭と大鋸屑から調製したバイオブリケットの燃焼試験の結果によれば, 原炭と比較してバイオブリケット燃焼からの大気汚染物質排出量は大幅に低減され, HCI, SO2およびダストの排出低減率もそれぞれ26-61%, 82-87%と55-83%に達していた。したがって, 石炭のバイオブリケット化は有効な酸性雨汚染防止対策の一つと考えられる。バイオブリケットは, 原炭に比べて揮発分を多く含むバイオマスを添加するため, 着火温度が低下し, 燃焼性が向上する。バイオマスに含まれるリグニン等が粘結剤 (バインダ) として機能すると考えられるが, 12.1-35.1%のリグニンを含むバイオマスを添加して調整したバイオブリケットの耐圧強度は石炭種類, バイオマスの添加量, バイオマス中のリグニン含有量によって異なるが, 25%の農林廃棄物添加のバイオブリケットは通常の取り扱いに必要な40kg以上の耐圧強度に達していた。よって, バイオブリケットの副原料としてリグニン含有量の多いバイオマスを用いれば, 特別な粘結剤を添加しなくても強度の高いブリケットが製造できる。

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