大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
晩秋における大気中粒子状有機物質の光化学生成
薩摩林 光鹿角 孝男西沢 宏横内 陽子植田 洋匡
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 36 巻 3 号 p. 174-184

詳細
抄録

高濃度の浮遊粒子状物質が出現する晩秋から初冬におけるエアロゾル中の有機物質成分の挙動特に, 光化学生成について解析した。エアロゾルの採取は晩秋の内陸部の都市 (岡谷市, 長野市) において, 日中 (12~17時) と夜間 (17時~翌日12時) に分けて約1週間行った。石英ろ紙上に採取された有機成分はジクロロメタンとメタノールで抽出し, キャピラリカラムを装着したGC/FIDで分析した。
まず, 有機炭素 (OC) および元素状炭素 (EC) 濃度を定量し, 次にOCの主要成分の分析を行った。分析できた成分は, ピノンアルデヒド, C17-C33n-アルカン, C12-C23脂肪酸, ジカルボン酸, 安息香酸, 同定できない低分子混合成分 (LUCM) および同定できない高分子混合成分 (HUCM) であった。分析できた成分の総量の平均は岡谷が1.4μg/m3, 長野が3.4μg/m3であり, 両地点ともOC総量の20%程度であった。これらの成分のうちピノンアルデヒド, ジカルボン酸, 安息香酸とLUCM濃度は日中に高くなる時間変動を示した。日中の光化学生成による割合は, いずれも50%以上になると推定された。以上の結果より, 晩秋においても日中の光化学反応により粒子状有機物質が多量に生成することが判明した。

著者関連情報
© 大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top