大気環境学会誌
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関西地域における春季高濃度汚染の数値シミュレーション
(2) 汚染発生機構の感度解析
大原 利眞若松 伸司鵜野 伊津志
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2001 年 36 巻 4 号 p. 231-243

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抄録

大阪を中心とする関西地域において春季に発生する二酸化窒素NO2などの高濃度汚染メカニズムを解明するために, 1993年4月に航空機観測を含む特別観測が実施され (Wakamatsu et al., 1998), そこで得られた観測データをもとに汚染動態を再現可能な数値シミュレーションモデルが構築された (大原ほか, 2001)。本論文は, この数値モデルを用いたシミュレーションによって, 特別観測で捉えられた春季高濃度エピソードにおける汚染発生原因を明らかにすることを目的とする。
始めに基本シミュレーション結果の解析結果から, 大阪湾上の船舶から排出された窒素酸化物NOxは大阪湾周辺地域のNO2汚染に大きな影響を及ぼしていること, NO2汚染の発生には大阪湾周辺の局地風循環の影響が大きいこと, 地上オゾンは混合層発達に伴うバックグラウンド (BG) オゾンの上層からの取り込みと都市域で排出されるNOとの反応消滅によって都市域周辺の丘陵・山岳において高濃度となることなどが明らかとなった。
次に, 3種類の感度解析実験 (生成要因感析実験, 前駆物質排出削減実験, BGオゾン変動実験) を実施し, その結果,(1) NO2生成過程を期間平均で評価すると, モデル領域内からの一次排出10%, モデル境界からの流入40%, 反応生成50%(BGオゾンとの反応による生成60%, 光化学反応による消滅10%) と推計されること,(2) 大阪湾周辺地域の地上におけるオゾン生成過程を期間平均で評価すると光化学反応による生成寄与が10%と小さいのに対してBGオゾン寄与は90%と大きいこと,(3) モデル領域内のNOx排出量の削減率とNO2濃度との問には線形関係が成立し, NO2濃度低減のためにはNOx排出量の削減が有効なこと,(4) NMHC排出削減によるNO2低減効果は極めて小さいこと,(5) NO2濃度に対するBGオゾンの影響は大きいこと, などが明らかとなった。また, 以上で示したように春季のNO2生成に対しBGオゾンの影響が大きいこと, 並びに年間を通して4月にBGオゾンが最も高くなること (長野八方尾根における観測結果による) から, NO2が春季に高濃度となる原因としてNOとBGオゾンとの反応による生成が多いことが考えられる。

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