大気環境学会誌
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可動翼列を用いた大気拡散風洞実験 (II)
気流特性
永井 清之水本 伸子
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2001 年 36 巻 5 号 p. 275-289

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抄録

大気境界層では観測時間 (平均化時間) とともに, スパン方向風速v の変動σvが大きくなる。このため観測時間とともに煙のスパン方向拡散幅のも大きくなる。可動翼列法は, 風洞の上流に鉛直に設置された翼列を水平方向に加振し, 長い観測時間に応じた大きなσyを風洞で再現する加振法の1種である。本報告では可動翼列装置で人工的に発生させた乱流の特性について, 地面粗度やスパイヤを用いる従来の風洞実験法や自然風の観測値と比較し, 相似である点, 異なる点を明ら, かにした。また, その影響が乱流拡散に与える影響について考察した。可動翼列法による乱流は, 従来法や自然風と以下の点で大きく異なることがわかった。スパン方向2点でのv成分のコヒーレンスが翼列の加振周波数領域で大きい。鉛直方向に隔たる2点間でのv成分の相関係数は, 距離に対して相関係数が直線的に変化する。以下の点は従来法や自然風と同様であった。風速のエネルギスペクトルは周波数ピーク近傍から高周波数に向けて-2/3乗で減衰する領域を持つ。平均風速, 乱れ強さ, 乱流スケールの鉛直分布はべき乗で表される。v成分の頻度分布は正規分布と良く一致する。主流風速uとvのコヒーレンスは加振周波数領域を含めて低い。これらの結果から可動翼列法で人工的に低周波成分を発生させた風洞気流は, 横方向と鉛直方向の空間的な相関の分布が自然風より大きく一致しないことがわかった。しかし, 平均風速, 乱れ強さ, 乱流スケール, レイノルズ応力等の境界層の一般的な構造は自然風の特徴と良く一致した。

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