大気環境学会誌
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広域・高時間分解観測による初冬季高濃度SPMの主要化学組成および水分影響の解析
兼保 直樹吉門 洋近藤 裕昭
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2002 年 37 巻 2 号 p. 108-121

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抄録
初冬季に出現する広域・高濃度汚染時のSPMの挙動解明と, 今後, 拡散型シミュレーション・モデルを開発するにあたって計算結果の検証に必要となるデータを収集するため, 関東平野内の5地点においてSPMの主要構成成分の経時変化を観測した。各地点ともSPMを捕集用フィルターの交換を2時間毎として高時間分解のデータとするとともに, 同一の吸引速度・分粒器・保存方法を用いることにより質的に揃ったサンプルの採取を行った。炭素系粒子 (元素状炭素, 有機炭素) は高濃度時のSPM重量濃度の約50%占め, これを適切に再現することがSPMモデル構築において重要であることが確認された。主要イオン成分であるCl-, NO3-, およびNH4+はガス-粒子平衡によりNH4ClとNH4NO3の形態をとっているが, 関東平野中・西部の観測地点では前駆ガスであるNH3の供給量がこれらの粒子形成量を規定しており, 一方, 関東平野北東部の観測地点ではNH3は過剰に存在し, HClおよびHNO3の供給量がこれら粒子形成量を規定していると推測された。また, β線吸収式SPM計による測定値とフィルター捕集のSPMの組成分析結果から, 大気汚染常時監視局におけるSPM測定値に対する水分影響の検討を行った。相対湿度上昇による水溶性粒子の潮解・膨潤のモデリングに関して, Winklerの実験式をもとにした膨潤モデルを適用する際, 観測局舎内に引き込まれた外気導入管内の湿度の上限が80~90%の間にあると仮定することで, 観測結果が比較的良好に説明された。
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