大気環境学会誌
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組成別SPM濃度シミュレーション・モデルの開発と初冬季高濃度大気汚染への適用 (I)
発生源モデルの構築
兼保 直樹吉門 洋近藤 裕昭守屋 岳鈴木 基雄白川 泰樹
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2002 年 37 巻 3 号 p. 167-183

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抄録

関東平野における初冬季の高濃度SPM汚染を対象として, SPMを構成する一次粒子および二次粒子前駆ガス成分を対象とした発生源モデルを構築した。元素状炭素粒子および有機炭素成分の主要排出源の一つとして, 実走行状態の自動車群からの排出係数を自動車専用道路における観測から推定した。清掃工場および産業廃棄物処理場からの塩化水素発生量を, 各施設の排ガス中濃度および排ガス量の調査結果ら求め, 排ガス濃度が報告されていない場合は排ガス処理装置種別に一定値を与えた。アンモニアについては, 家畜・肥料使用, 排煙脱硝装置, ガソリン車, 人体, および下水処理からの発生量を推定した。窒素酸化物, 二酸化硫黄, および非メタン炭化水素の発生源モデルについては, 過去の調査事例をもとに整備・拡充する形で作成した。設定領域からは, 面積にしてほぼ匹敵する広さを持つSouth Coast Air Basin領域 (ロスアンゼルス周辺領域) の4倍の元素状炭素の排出量が推計され, また1984年時の英国全土からのHCl排出量の約80%の排出が見込まれるなど, 関東地方からのSPM原因物質の排出量が極めて大きなものであると推計された。アンモニアの発生量については, 発生源データの不確定性から, 推計値には大きな誤差が含まれる可能性がある。

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