大気環境学会誌
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スギ林における酸の乾性沈着量の時間的変動
インフェレンシャル法による沈着量の年変化と季節変化の評価
高橋 章佐藤 一男若松 孝志吉川 邦夫
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2002 年 37 巻 3 号 p. 206-215

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抄録

森林への酸の沈着量の時間的変動を明らかにするために, 群馬県妙義町のスギ林において3年間 (1997年4月~2000年4月) にわたり, 気象, 大気濃度の連続観測を行った。この観測データをもとに, インフェレンシャル法によりSO2, NO2, HNO3, HClの乾性沈着量を推定した。その結果, 上記4種のガス状物質による各年のH+乾性沈着量は, 61~83mmolm-2yr-1と推定された。推定に伴う誤差を考慮すると, H+ 乾性沈着の年較差は有意なものではなかった。観測された各年のH+湿性沈着量は, 28~43mmolm-2yr-1であった。したがって, このスギ林には, 湿性沈着の約2倍に及ぶH+が乾性沈着により定常的にもたらされていることがわかった。H+の乾性沈着量は暖候季に多く, 寒候季に少ない傾向が認められた。だが, その変動の程度は, 湿性沈着量に比べて相対的に小さなものであった。H+乾性沈着量に占める各ガス状物質の割合は, 季節により大きく変動し, 秋~冬期にはHCIの寄与が卓越し, 夏季にはHNO3, SO2の寄与が増大した。

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