大気環境学会誌
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成人女性の呼吸器症状有症率に及ぼす粒子状物質の影響
牧野 国義栗田 雅行市川 勇
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2002 年 37 巻 5 号 p. 273-281

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抄録

この研究の目的は, 呼吸器症状有症率と粒子状物質 (PM) 汚染との関連性を検討することである。PMは, 日本では粒径が10ミクロン以下の浮遊粒子状物質 (SPM) として継続測定されている。そこで, ここでは以下の2点を勘案した。一つは, 東京の47測定地点の内で, SPMが最高の板橋地点と最低の青梅地点を含めた6地点とし, もう一つは, 調査対象を測定地点から300m以内に居住する成人女性とした。成人女性は職業曝露 の影響が小さく小地域で観測される大気汚染物質濃度は地域内の濃度範囲も小さくするので, この小地域での調査は従来の調査よりも曝露濃度の推定精度を向上させると考えられる。調査対象へのアンケートは, 呼吸器8症状, 既往歴7疾患, 年齢層, 喫煙習慣, 居住環境項目を含めた簡易化したATS-DLD質問票を用いた。その結果, 5年齢層中60歳以上が最多であったため, 多くの症状の有症率が従来の調査よりも高率となった。せき, たん, 息切れの有症率は, 従来調査で都市に居住する高齢者の成人女性の有症率に相当する15%程度に達した。ロジスティック回帰分析によると, 加齢や喫煙の影響がいくつかの症状について認められ, SPMはせき, たん, 喘鳴, 慢性の喘鳴, 喘息と有意であった。一方, 二酸化炭素 (NO2) はどの症状とも有意でなかった。

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