大気環境学会誌
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長時間捕集測定による年間平均濃度の推定精度の向上
姫野 修司浦野 紘平
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2003 年 38 巻 2 号 p. 67-77

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抄録

低濃度の長期間曝露による影響が問題になる揮発性有機化合物類 (VOCs) およびダイオキシン類 (DXNs) や多環芳香族炭化水素類 (PAHs) などの半揮発性又は難揮発性有機化合物類 (SNVOCs) の影響は「年間平均濃度」で評価されている。しかし'これら汚染物質の測定には多大な労力と費用を要し, 多数回の測定が困難であるために少数の「測定値の年平均値」を年間平均濃度とみなしているので, その推定精度を明らかにし'精度向上を図る必要がある。
そこで, 捕集時間を変化させた場合に, 測定値の年平均値を年間平均濃度とみなしたときの測定回数と誤差範囲との関係を全国で連続測定が実施されている非メタン炭化水素 (NMHC) と浮遊粒子状物質 (SPM) のデータを代表的指標として用いて解析し, 長時間捕集測定法がきわめて有効であることを示した。
まず, NMHCの24時間捕集での1ヵ月に1回の測定では, 90%誤差範囲は地域によって±13~±23%になり, 主なVOCsでも同程度の誤差になる可能性が示された。また, SPMの半年に1回の測定では±47%~ ±62%'4季に1回の測定では±32%~ ±45%にもなり, 主に粒子状で存在するDXNsやPAHs等のSNVOCsでも同程度の誤差になる可能性が示された。
しかし, 1回の捕集時間を7日間とすれば, 同じ測定回数で24時間捕集に比べて誤差範囲を約2分の1にでき, 長時間捕集測定法が極めて効果的であることが明らかになった。また, 季節ごとに7日間捕集して年4回の測定を行えば, NMHCで±16%程度'SPMで±18%程度の誤差範囲で年間平均濃度を推算でき'現行の1ヵ月に1回の24時間捕集よりも小さな誤差範囲で, 効率的に年間平均濃度を推算できることを示した。

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