大気環境学会誌
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有機リン系殺虫剤の室内および外気濃度測定
斎藤 育江大貫 文瀬戸 博上原 眞一
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2003 年 38 巻 2 号 p. 78-88

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抄録

固相ディスクー溶媒脱着-GC-FPD分析による空気中有機リン系殺虫剤9物質の測定法を検討し, 東京都内の住宅, オフィスビルの室内空気および外気について, 濃度調査を実施した。
ジクロルボスは外気の90%以上 (夏期は100%), またフェニトロチオンは約30%(夏期は約60%) で検出されたことから, 大気はこれらの殺虫剤により広く汚染されていることが明らかとなった。室内空気中からは, ジクロルボス, ダイアジノン, クロルピリホスおよびフェニトロチオンが検出され, クロルピリホスを除く3物質については, 住宅よりもオフィスビルにおいて濃度が高い傾向がみられた。ジクロルボスの住宅, オフィスビルの室内空気および外気における濃度範囲 (中央値) はそれぞれ,<0.50~18.1 (1.4) ng/m3, 0.64~130 (4.0) ng/m3,<0.50~14.2 (3.1) ng/m3であった。ジクロルボスについては, 住宅の室内濃度と外気濃度との間に有意な正の相関 (r=0.892, p<0.01) がみられた。ダイアジノンの検出率は, オフィスビルで17%だったのに対し, 住宅では2%と低かった。また, ダイアジノンのオフィスビル室内における最大値は52.3ng/m3で, これは住宅室内最大値の16倍高濃度であった。フェニトロチオンの住宅, オフィスビルの室内空気および外気における濃度範囲はそれぞれ,<1.0~51.3ng/m3,<1.0~1, 480ng/m3,<1.0~6.0ng/m3であった。クロルピリホスは一戸建住宅でのみ検出され, その濃度範囲はく1.0~12.4ng/m3, 検出率は一戸建住宅の15%であった。また, クロルピリホスおよびダイアジノンについては, 厚生労働省の室内濃度指針値を超えるケースはなかった。

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