大気環境学会誌
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オゾン層破壊物質規制時期の都市域における大気中フロン類の動向
竹内 庸夫唐牛 聖文昆野 信也
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2003 年 38 巻 6 号 p. 384-395

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抄録

埼玉県ではオゾン層保護対策の一環として, 1990年から都市域においてフロン類のモニタリング調査を実施しており, 現在も継続している。都市部, 郊外部, 山間部を調査地点として毎月2回試料採取し, いわゆる特定フロンを始めとするフロン類およびその他の有機塩素化合物を分析した。また, 適宜, 上空の試料採取を行い, 高度分布を把握した。
その結果, 特定フロン類は1991年にはバックグラウンド地域と比べて明らかに高濃度であったが, 1995年の全廃規制時期の前後で濃度が低下し, 濃度変動の特徴も変化していることが分かった。特に1, 1, 1-トリクロロエタンの濃度はピーク時の約1/30へと急激に低下しており, 発生源からの影響の減少を示す濃度特性が得られた。これらの変化はオゾン層破壊物質に対する規制によるものと考えられ, 規制の効果がバックグラウンド地域よりも数年早く, また, より顕著に現れていた。しかし, ジクロロジフルオロメタン (CFC12) については都市域においても濃度の低下はわずかであるうえに, 現在でも大気へ放出されていることが濃度特性から示唆され, さらなる監視と対策が求められる。また, 規制に伴って様々な物質転換が行われており, ハイドロクロロフルオロカーボンやハイドロフルオロカーボンについては大気放出による濃度上昇と大きな濃度変動がみられ, 洗浄剤分野ではトリクロロエチレンの代替使用の増加がその濃度上昇を引き起こしていることが認められた。このことからトリクロロエチレンによる環境影響が懸念されたが, 1998年以降の濃度は低下に転じ, この転換が一時的なものであることが推定された。

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