大気環境学会誌
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代理表面法を用いた二酸化硫黄と硝酸の乾性沈着量の測定
藤田 慎一松本 健高橋 章
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2005 年 40 巻 3 号 p. 112-121

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抄録

空力学的に設計した直径300mmの薄翼型の代理表面を用いて, 二酸化硫黄 (SO2) と硝酸 (HNO3) の乾性沈着量の測定を行った。SO2試料の採取にはK2CO3の6%溶液を含浸させた石英, HNO3試料の採取にはナイロン, 粒子試料の採取にはテフロンの各フィルタを用いた。あわせて気象要素の観測を行い, 乱流抵抗raと層流抵抗rbを計算して, 代理表面法で求めた全抵抗と比較した。
観測の結果, SO2の乾性沈着量は冬季に増加し夏季に減少するのに対して, HNO3の乾性沈着量は夏季に増加し冬季に減少することがわかった。この季節変化は, 大気中におけるSO2濃度とHNO3濃度の季節変化とパタン的に一致した。乾性沈着量Fと大気濃度Cとの問に原点を通る直線回帰を想定し, その比例定数vs=F/Cの形で沈着速度を求めた。推定されたSO2のvsは約0.6cm s-1, HNO3のvsは約1.1cm s-1であり, これらの値はさまざまな方法を用いて算定された既往の報告値と矛盾するものではなかった。気象要素の観測結果をふまえて, rc=1/vs-(ra+rb) の形で表面抵抗旋を求めた。推定されたSO2のrcは約0.7s cm-1, HNO3のrcはゼロに近い値であった。代理表面法を用いて酸性物質のモニタリングを行う際の問題点と, 今後の課題についても考察を加えた。

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