抄録
NO3ラジカル (以下NO,) とN2O5は夜間に高濃度で存在する物質である。
NO3はモノテルペン類を始めとするVOC等と反応し, 過酸化ラジカルや硝酸を生成する。N2O5はエアロゾル表面で不均一反応を起し, 硝酸を生成する。これらの反応は夜間における重要なNOx消失反応である。
今回, 我々は新しい手法としてレーザー誘起蛍光法 (LIF法) を用いた高感度, 高時間分解能を有するNO3/N2O5測定装置を開発した。NO3, N2O5の検出下限値はそれぞれ5pptv, 7pptvである (10分値)。
この装置を用いて2003年の12月に東京都立大学 (東京都八王子市) にて夜間都市大気中のN2O5の測定を行ったところ, 100-800PPtvのN2O5が観測された。また, NOの存在下でもN2O5が存在することがわかった。
この観測の結果, 冬季におけるNOx消失反応としてNO3とVOCの反応は寄与が小さく, N2O5の不均一反応が支配的であることがわかった。N2O5の不均一反応によるNOx消失量は5.4ppbv/nightとなり, 昼間のOHラジカルを介した反応と同程度の量であった。このことから, 夜間におけるN2O5の反応は大気の酸性化に重要な役割を果たすことが判明した。