大気環境学会誌
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風上の山によるダウンドラフトを対象とした大気拡散予測手法の提案
市川 陽一
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2005 年 40 巻 4 号 p. 172-179

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抄録

近年, 景観への配慮, コスト削減, 航空法の規制などの理由で, 煙突の高さを低く計画する火力発電所がある。このような場合, 煙突風上の山によるダウンドラフト (下降気流) にともなう大気汚染物質の高濃度が, 環境影響評価の予測項目の一つとして重要である。著者らは, 排ガス拡散におよぼす地形影響評価のために, 気流モデルと大気拡散モデルを組み合わせた予測手法TOPADSを既に提案している。本手法は高所, 大容量煙源に対して風洞実験や野外トレーサ実験をもとに妥当性の確認をしているが, ダウンドラフト時の大気拡散予測への適用性については検討を行っていない。また, 大気拡散数値モデルをダウンドラフトに着目して検証した事例はない。
本報告では, 野外気象観測とトレーサ実験の結果にもとついて大気拡散予測手法の適用性を検討した。赤城山麓において, ダウンドラフト時の乱流と拡散特性を把握した。TOPADSは地形影響を少し過大予測する傾向がある。また, 気流モデルは発生源の風上の複雑地形で乱流量に対する流入境界条件を設定する必要があるが, これは一般に困難である。そこで, 乱流計算結果を用いる代わりに, 気象観測結果から乱流量を求め, それらをもとに拡散計算する手法を提案した。本手法は, ケースによりTOPADSの過大予測傾向を改善し, ダウンドラフト時に比較的よい拡散予測結果を示した。また, 乱流量の流入境界条件を与えたり、乱流計算を行ったりする必要がないため, TOPADSより使いやすい。

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