大気環境学会誌
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関東・関西地域における光化学オキシダント濃度の週末効果に関する解析
第2報ダイナミックに変化するオゾン生成レジームの検証
神成 陽容
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2006 年 41 巻 4 号 p. 220-233

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抄録

関東・関西地域における1990~2002年度にかけてのデータから, 光化学オキシダント (Ox) 濃度の週末効果 (日曜日) として, 低オゾン生成ポテンシャル日における全域的な週末上昇効果および高オゾン生成ポテンシャル日にかけての週末低減効果への反転現象が見いだされている。また, 固定されたパーセンタイル点における空間的な週末効果反転現象も見いだされている。その原因を検討するため, 地域平均Ox濃度のパーセンタイル区間別のコンポジットを作成し, 前駆物質 (NOx, NMHC) 濃度および気象要素の週日・週末比較を行った。その結果,(1) オゾン生成レジームに関わる重要な条件であるNMHC/NOx比は時間空間的に多様であり, 発生源地域でHC-limited寄り, 遠隔地域でNOx-limited寄りの空間的な傾向が存在するとともに, 低オゾン生成ポテンシャル日にHClimited寄り, 高オゾン生成ポテンシャル日にNOx-limited寄りという時間的にも重要な特徴が存在する,(2) 固定点において時間的な週末効果の反転が生じる主因は, O3生成ポテンシャルが低い日から高い日にかけて, HC-limitedからNOx-limitedへのオゾン生成レジームの変化があるため, 週末のNOx低減が “O3生成抑制効果の解除” から,“O3生成促進効果の減少” へと役割を変えることにあること,(3) O3高濃度期における空間的な週末効果反転の主因は, 移流過程における硝酸への酸化や沈着による速やかなNOxの除去等によって生じるHC-limitedからNOx-limitedへのオゾン生成レジームの変化のために, 週末の大きなNOx低減の役割が (2) と同様に転換することにあることが見いだされた。さらに, 週末効果の反転現象を利用してオゾン生成レジームのHC-limitedとNOx-limitedの境界値をみつもり, 関東地方ではNMHC/NOx=7~16, 関西地方ではNMHC/NOx=6~12 (いずれも5-15時平均濃度による比) の間にあるものと推定した。本研究により, オゾン生成レジームが時間空間的にダイナミックに変化していることが検証された。また, 東京都中心部は年間を通してHC-limitedの領域にあるため, NOxの削減はOx濃度低減対策として逆効果であることが明確となった。

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