大気環境学会誌
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常時監視局の環境濃度の解析による関東都市部における最近のSPM濃度経年変化とその原因に関する考察
水野 建樹
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2006 年 41 巻 5 号 p. 249-258

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抄録

常時監視局データを用いて関東都市部 (東京都・神奈川県・埼玉県) におけるSPM濃度の1996年以降の経年変化と各種施策の効果およびその他の影響との関係を解析した. ある地域内のSPM濃度について, 自排局平均値と一般局平均値の濃度差は自排局近傍道路からの1次粒子の影響だけを反映すると仮定し, 一般環境局における自動車起源の一次粒子濃度寄与分を推定した. その結果, 2002年度まではディーゼル車対策その他による自動車起源の1次粒子濃度削減への効果は東京都区内よりも埼玉県, 神奈川県, 東京都郊外で比較的大きな寄与をしていると推察された. NOxについても自排局と一般局の濃度差から自動車起源の影響をみたが, 自動車対策等の影響はSPMに比べ極めて小さい結果となった.
次に, 各地域のダイオキシン類対策によるSPM濃度への影響をみるために, 一般局のSPM濃度から自動車1次粒子の濃度寄与分を除いたSPM濃度とダイオキシン類濃度を比較した. 両者はよい相関を示したので, ダイオキシン濃度との間に線型回帰式を当てはめ, ダイオキシン類対策によるSPM濃度低減効果を調べた. 結果的に, どの地域でも固定源である焼却施設へのダイオキシン対策はSPM濃度低減化に大きな効果をあげたと推察された. 一般局のSPM濃度からこれら1次粒子の寄与率が小さくなったことにより, 最近は二次粒子などによる夏季の濃度が相対的に目立つようになってきたといえる.

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