抄録
2003年から2004年にかけて, 東京都八王子市の首都大学東京南大沢キャンパスにおいてレーザーポンプ・プローブ法を用い大気中のOHラジカル反応性の測定を行った. OHラジカルの反応性とはOHラジカルの大気寿命の逆数であり, OHラジカルの消失過程に関する情報が得られる. また, 反応性の測定と同時に約70種類の化学種について大気中の濃度測定を行い, 実測したOH反応性と約70種類の化学種から見積もった反応性との比較を行った. その結果, 冬季は比較的よい一致を示したが, それ以外の季節では反応性のうち2-3割もが未知なるOHラジカルの反応相手によるものであることが明らかとなった. 反応性の差が生じた原因を探るため, OHとNO, の反応速度定数の不確かさやエアロゾルの影響について検討を行ったが, それらによる影響は有意でないことがわかった. その結果, 未知なるOHラジカルの反応相手が大気中で生成する2次的な化学物質である可能性が示唆された. 測定したOHラジカル反応性から, 大気中でOHラジカル1分子が生成しうるオゾン量であるオキシダントポテンシャルを導き, 大気質診断に対する有用性を示した. 週末にオゾン濃度が高くなるオゾンのウィークエンド効果が知られている. 首都大学東京におけるNOx濃度の連続測定の結果とオキシダントポテンシャルのNOx依存性からウィークエンド効果を説明可能であることが分かった.