大気環境学会誌
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カラマツ,アカマツおよびスギ苗の成長に対するオゾンと土壌への窒素負荷の単独および複合影響
渡辺 誠山口 真弘岩崎 真弓松尾 直樹那波 純一田辺 千佳子松村 秀幸河野 吉久伊豆田 猛
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2006 年 41 巻 6 号 p. 320-334

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抄録

カラマツ, アカマツおよびスギ苗の成長に対するオゾン (O3) と土壌への窒素負荷の単独および複合影響を調べた。4段階のガス処理 (浄化空気, 外気O3濃度の1.0, 1.5および2.0倍) と3段階の土壌窒素処理 [O (NO), 20 (N20) および50 (N50) kg ha-1 year-1] を組み合わせた12処理区において, 2成長期にわたって苗木を育成した。土壌への窒素負荷によって, カラマツの成長におけるO3感受性が低下した。一方, アカマツとスギの成長におけるO3感受性は土壌への窒素負荷の影響を受けなかった。個体乾重量の増加量を10%低下させる一成長期あたりのAOT40をクリティカルレベルとすると, その値はカラマツで28 (NO), 29 (N20) および53 (N50) μmolmol-1h, アカマツで38μmol mol-1h, スギで111μmol mol-1hであった。3樹種の成長におけるO3感受性と針葉の純光合成速度と葉乾重量の積である個体あたりの純光合成速度 (Atotal) におけるO3感受性との間に正の相関が認められた。以上の結果より, カラマツのような樹種におけるO3のクリティカルレベルを評価する際には, 土壌への窒素負荷量を考慮する必要があることが明らかになった。また, Atotalは土壌への窒素負荷を考慮に入れて, 我が国の針葉樹の成長におけるO3感受性を推定する際の有用な指標である。

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