2007 年 42 巻 1 号 p. 1-15
1980年代の後半, 東京では自動車排出ガスによる大気汚染は深刻な状況にあり, これは, 1973年の石油危機以降急激に増加した, ディーゼル車の交通量増加に起因した。このため使用過程の大型ディーゼル車に着目し, 排出実態把握や低減対策に関する研究を行った。
車載計測システムによる幹線道路での実走行調査を行い, 渋滞走行ではアイドリングモードの排出寄与率が高く, 一般走行では加速モードの排出比率が高いという排出メカニズムを明らかにした。この結果から'ユーザが取り組める対策として「アイドリング・ストップ」を提案し, NOx排出量や燃費の削減効果があることを確認した。次に, 使用過程車用DPFの開発研究を行い, 後付け装着しても実用可能な性能があり, PMだけでなくHAPS等の低減に有効であることを実証した。
都市の大気汚染は改善の傾向にあるが, PM2.5, ナノ粒子やHAPS等の未規制物質については課題として残されている。今後のディーゼル車には後処理装置の装着が必須であるが, 規制項目だけでなく排出ガスによる健康へのリスクを低減するという視点が必要である。