大気環境学会誌
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含フッ素消火薬剤の大気環境影響に関する研究
貴志 孝洋新井 充
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2007 年 42 巻 1 号 p. 48-55

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抄録

石油火災など大規模産業火災の発生時に主に用いられるフッ素系界面活性剤を含む水成膜泡消火薬剤の燃焼生成物について流通系反応装置を作成し、燃焼実験を行なった。昇温には赤外炉を用い、生成物の分析にはLC-MSおよびGC-MSを用いた。燃焼生成物として粉塵とガスが得られた。粉塵はろ紙フィルターで捕集後、超音波抽出法により蒸留水に抽出し、LC-MS測定を行なった。また生成ガスは蒸留水を通じた後、テドラーパックで捕集し、GC-MS測定を行なった。その結果、粉塵中からは多環芳香族の他にフッ素系界面活性剤の原料であるパーフルオロオクタンスルホン酸 (C8HF17SO3) および関連物質のパーフルオロオクタン酸 (C8HF15O2) などが検出された。現在、パーフルオロオクタンスルホン酸を始めとする過フッ素化化合物の世界的な拡散と蓄積が新しい環境問題 (PFOS問題) として欧米を中心に注目されつつあるが、その環境内運命はまだ充分に明らかにはなっていない。本研究では水成膜泡消火薬剤に含まれるフッ素系界面活性剤がPFOS問題の原因物質のひとつに、そしてその燃焼がPFOS問題の原因のひとつとなり得ることが確認された。また生成ガスからは二酸化硫黄およびフッ化水素が確認された。

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