大気環境学会誌
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埼玉県北部のPM2.5濃度と化学組成の5年間の観測結果
米持 真一梅沢 夏実松本 利恵
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2007 年 42 巻 2 号 p. 129-142

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抄録

首都圏郊外に位置する, 埼玉県北部の騎西町において, 2000年から5年以上にわたり, PM2.5の質量濃度および主要成分濃度の連続観測を行った。PM2.5の捕集にはPM2.5サンプラー (R & P社, Partisol Plus 2025) を用い, 一週間単位の質量濃度および主要化学組成の分析を行った。PM2.5濃度には明瞭な減少傾向は見られなかった。微小粒子の主成分である, 水溶性無機イオンと炭素成分について分析を行い, その推移を評価した。水溶性無機イオンの90%は, 塩化物イオン (Cl-), 硝酸イオン (NO3-) および硫酸イオン (SO42-) と, これらを中和するアンモニウムイオン (NH4+) で構成されていた。陰イオン3成分濃度は特徴的な季節変動が見られた。Cl-と炭素成分 (TC), 特に, 元素状炭素 (Cel) には明瞭な減少傾向が見られた。また, NO3-にも緩やかな減少傾向が見られた。一方, SO42-には減少傾向は見られず, 2004, 2005年は, 冬期を除く季節で増加していた。
並行して稼働させたTEOMの観測値とPM2.5サンプラーによるフィルター捕集との比較では, 年平均値では概ね同程度の値であったが, TEOM内部での半揮発性成分の揮散量と, 外気温に依存するPM2.5サンプラーのフィルター上からの揮散量の大小関係により, 両測定値の差には特徴的な季節変動が見られた。

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