大気環境学会誌
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落葉広葉樹林におけるオゾン濃度の鉛直分布とその季節変化
藤田 慎一中屋 耕室崎 将史
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2007 年 42 巻 2 号 p. 84-92

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抄録

山岳地域に到達したオゾンの消滅過程や植物影響を検討するうえで, 森林への沈着フラックスの評価は重要である。オゾン濃度の鉛直分布は, 沈着速度を算定するうえでもっとも基本的な因子の一つである。本報では長野県北佐久郡 (浅間山麓) の落葉広葉樹林を対象に, パッシブサンプラーによる多点測定と紫外線吸収方式による連続測定とを併用して, 林内におけるオゾン濃度の鉛直分布とその季節変化を調べた。
観測地点の林内 (高度4m) におけるオゾンの年平均濃度は, 約39 ppbであり春季に高く冬季に低かった。濃度の日較差は夏季に大きく冬季に小さかった。オゾン濃度の鉛直分布は, 対数則による減衰特性が異なる林冠内, 中低木, 地表面の三つの部分から構成されていた。枝下部のオゾン濃度には, 林冠下部よりやや増加する傾向がみられた。林内に流入したオゾンの大部分は, これら三つの部分を輸送される過程でほぼ完全に分解され, 地表面のごく近傍ではゼロに近い濃度になった。各部位における濃度減少と林外の平均濃度との比 (減衰率) は, 夏季に林冠内で約50%, 中低木で約10%, 地表面で約40%であり, オゾンの除去過程に占める地表面の役割は大きかった。こうした複雑な濃度分布の形成は, 風によるオゾンの補給と森林や土壌によるオゾンの分解のバランスに支配されていること; 濃度勾配の季節変化には, 林冠の発達 (夏季) と風速の増加 (冬季) の二つが関与していることが示唆された。

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