大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
冬季・九州地域で観測された高濃度エピソードに対する中国メガシテイの影響
片山 学大原 利眞鵜野 伊津志村野 健太郎畠山 史郎
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 42 巻 3 号 p. 175-187

詳細
抄録

地域気象モデルRAMSと連携した化学物質輸送モデルCMAQを用いて, 1999年2月前半に九州地域で観測された高濃度エピソードを対象に, 硫黄化合物 (SOx) と窒素化合物 (NOy) の北京と上海からの寄与を解析した。 CMAQは, 九州地域の地上や東シナ海の上空で観測されたSOx濃度と全硝酸塩濃度 (=HNO3+NO3-) の変動の特徴を再現する。 シミュレーション結果によると, 最も高濃度となった7~11日には, 大陸起源の高濃度汚染気塊が東シナ海上の移動性高気圧周りの気流によって輸送されている。 この期間は上海起源の寄与が大きく, 長崎県福江島では, 上海起源の寄与率は最大でSOxとNOy ともに67%に達し, その平均濃度は前後の期間に比べて約7倍も高い。 また, 福江島における北京起源と上海起源の寄与は, 交互に1~4日間にわたって大きくなる特徴があり, 東アジアスケールの気圧配置の変化に大きく影響されている。 西日本における, 北京起源と上海起源の濃度を地域別に比較すると, SOxとNOyともに北京起源はわが国の中国地域で最も高く, 上海起源は九州地域で最も高い。 北京起源と上海起源を合わせた寄与率は, 西日本地域でSOx18%, NOy12%に達し, 北京と上海からの排出物質は西日本の大気質に大きな影響を与えていることが明らかとなった。

著者関連情報
© 大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top