大気環境学会誌
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日本のSO42-沈着量における経年変動のモデル解析
片山 学大原 利眞鵜野 伊津志原 宏
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2008 年 43 巻 3 号 p. 136-146

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抄録

地域気象モデルRAMSと連携した化学物質輸送モデルCMAQ及び排出量インベントリREASを用いて, 1995年から2003年を対象に日本のnss-SO42-沈着量における経年変動とその要因を解析した。環境省酸性雨対策調査の遠隔または田園地域における継続測定地点のうち, 本州から離れた小笠原を除く18地点平均のnss-SO42-湿性沈着量は, 1999年から増加傾向にある。CMAQは, 観測された増加傾向をはじめとする時間変動の特徴を非常に良く再現する。そこで, このモデルを使って, 日本のnss-SO42-沈着量の変動要因を, 三宅島火山からのSO2排出, 三宅島を除く発生源からのSO2排出, 気象に分けて解析した。東アジアにおける気象の変動は, 日本のnss-SO42-沈着量に大きな影響を与え, nss-SO42-沈着量の変動における主要な原因のひとつとなっている。また, 三宅島火山は2001年の日本のnss-SO42-沈着量に大きな影響を与えているが, 2002年以降には, その影響は減少する。さらに, 三宅島を除く発生源から排出されるSO2による日本のnss-SO42-沈着量は, 中国のSO2排出量と相関して2000年以降, 年々大きくなっており, 中国からの越境汚染の増大が示唆された。また, 三宅島火山の影響が小さい西日本では, 気象の変動がnss-SO42-沈着量の年々変動に影響を与えるとともに, SO2排出量の増加がnss-SO42-沈着量の経年的な増加に大きく影響しており, 2000年から2003年におけるnss-SO42-沈着量の増加率は西日本の方が日本全域よりもやや大きい。

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