大気環境学会誌
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2007年5月8-9日に発生した広域的な光化学オゾン汚染: 観測データ解析
早崎 将光大原 利眞黒川 純一鵜野 伊津志清水 厚
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2008 年 43 巻 4 号 p. 225-237

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抄録

2007年5月8-9日に観測された注意報レベルに達するオゾン (O3) 高濃度事例を対象として, 全国の1時間平均大気汚染物質濃度測定値を用いた動態調査をおこなった。
O3濃度上昇は, 8日の早朝に日本列島西端の五島から観測され始めた。隠岐における日最高O3濃度は深夜に観測された, 日本海沿岸では, 日最高O3濃度は東側ほど遅い時刻で観測された。離島では, 二酸化硫黄と粒子状物質もオゾンと同期した濃度変化を示した。後方流跡線解析とライダーによる入為起源粒子の鉛直分布から, 汚染気塊はアジア大陸を起源とすることが示された。
9日は主に東日本でO3高濃度を観測した。日本海側では, 前日と同様に東側ほど遅い時刻で日最高O3濃度を観測した。それに対して, 関東平野では観測時刻の遅れは内陸側に向かう方向でみられ, O3濃度も日を追う毎に高くなった。高濃度期間の汚染物質濃度と気象条件の時空間変動から, 関東平野では, 大規模海陸風循環の継続による都市汚染の蓄積の影響も大きいことが示唆された。
以上の結果から, 日本列島規模の広範囲では越境汚染がO3高濃度の主要因であり, 都市近郊では国内起源汚染がそれに上乗せされていたと考えられる。

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