大気環境学会誌
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家庭用ストーブの模擬燃焼条件におけるバイオブリケットの硫黄固定効果
山田 公子王 青躍坂本 和彦
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2008 年 43 巻 5 号 p. 264-272

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抄録

本研究では、実験室での燃焼実験において、中国重慶市の石炭利用家庭で使用されている家庭用ストーブの燃焼条件、特に固体表面の燃焼温度を模擬し、4種類のバイオブリケットの硫黄固定効果を検証した。特に、バイオブリケットの硫黄固定率と硫黄の排出挙動、及び燃焼灰の組成に対する燃焼温度の影響について調査した。
実験室での燃焼実験により、これまでの研究で想定されてきた燃焼温度800℃におけるバイオブリケット (Ca/S=2) の硫黄固定率は88-96%と高いことを確認した。一方、家庭用ストーブで観測された燃焼温度1000℃に設定した際の硫黄固定率は33-71%となり、800℃と比較して26-63%減少した。この結果は、燃焼温度1000℃までの昇温過程において、チャー燃焼段階の燃焼温度850℃以上で硫黄の排出が確認されたこと、並びにバイオブリケット燃焼灰の組成のメインピークがCaSO4からCa2Al (AlSiO7) へと変化したことから、固定された硫黄化合物CaSO4の熱分解に起因することが明らかとなった。また、800℃の条件での硫黄固定率に対する1000℃の条件での硫黄固定率の減少率は、バイオブリケットの種類により変化したことから、原料となる石炭の種類に依存することが示された。特に、石炭の発熱量と灰分含有率、及び鉱物組成が重要な因子となることが示唆された。硫黄の排出抑制の観点から、バイオブリケットは家庭用、もしくは工業用といったように、用途別に石炭の種類を選択する必要性が示唆された。また、選択時の指標として、石炭の発熱量、灰分含有率、そして灰分中の鉱物組成が指標となり得る可能性が見出された。

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