大気環境学会誌
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臭気の検出能力測定に基づく新規大気質指標の提案
樋口 能士韓 盛喜羽子岡 努
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2008 年 43 巻 5 号 p. 284-294

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抄録

嗅覚測定に基づく新しい大気汚染指標を提案し,「臭気指数変化 (Shift of Odor Index, SOI)」と名付けた。SOIは「環境大気の汚染状態がヒトの臭気の嗅ぎ分けを妨げる程度」の計測であり, ある標準的な臭気物質 (標準臭気試料) の検出を, 無臭空気中および測定対象である環境大気中で測定し, それぞれで算出される臭気指数 (Odor Ihdex, 10×10g (臭気濃度) で定義される値) の差により算出される。本研究では, 標準臭気試料にn-ブタノールガスを用いた。最初に, SOIの計測で要求される臭気指数の差異の検出力を高めるために, 三点比較式臭袋法の測定手順に独自の改良を加え, その手順で用いる個人嗅覚閾値の算出方法を検討した。その結果, 3倍希釈系列の1段階を4等分した個人嗅覚閾値算出用の尺度が, 5等分した尺度よりも適していると判断された。さらに, 幹線道路近傍大気を対象としたSOIの測定を, 主要な大気汚染物質濃度の計測と同時に行った。その結果, 一般幹線道路と高速道路では, SOIと主要大気汚染指標との間の関係に異なる特性が見られた。またSOIは, 非メタン炭化水素 (NMHC) とは挙動が異なる, 独自性の高い指標となり得る可能性が示された。一方, 環境大気中の主要な臭気物質であるアセトアルデヒドに対するSOIの検出感度は, 通常の臭気指数測定の場合と比較して劣っていると予想され, SOIの検出力向上には, 標準臭気試料の再検索などが必要であると考えられた。

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