2017 年 19 巻 p. 111-120
本稿の目的はバタイユ理論における「自然」の意味を把握することにある。議論は次のようになされる。最初に,バタイユが自身の議論の基底に「自然」を置いていること,また,その「自然」の意味づけが変化しているという観点を示す(第1節)。次に,1927年頃に書かれたと思われる最初期のエッセイ「太陽肛門」において描き出されている「自然」を明らかにする(第2節)。続いて,雑誌「ドキュマン」においてバタイユが発表した論考から彼の「自然」概念の変化を考える(第3節)。次に,「社会批評」に1932年に発表された論文「ヘーゲル弁証法への基底への批判」における「自然」概念の展開を見る(第4節)。われわれはこれらの探求によりバタイユの考える「自然」が詩的・文学的なイメージを超え,ひとつの政治哲学的思想を支える基礎にまで展開されていることを示す。最後に,これらの探求を踏まえた上での今後必要となる研究に触れる(第5節)。