抄録
要旨:症例は71歳,女性.B型慢性肝炎を伴う胆嚢癌の術後にて当科外来に通院,外来にて化学療法を施行していた.全身倦怠感が著明となったため当科外来受診し,精査目的にて入院となった.CTを施行したところ,ガスを伴う肝膿瘍を認めた.また右側腹部の皮膚の発赤も認め,徐々に広範囲となった.肝膿瘍に対してドレナージ術を施行し,抗生剤投与を行うも,急速に全身状態が悪化し,入院後わずか7時間で敗血症にて死亡した.後日,血液,肝膿瘍内容からAeromonas hydrophilaが検出された.
A. hydrophilaによる感染症は免疫能の低下した状態では重篤化することが報告されている.今回我々は免疫能の低下した胆嚢癌術後の患者に発症し急激な経過をたどった,肝膿瘍を伴うA. hydrophila敗血症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.