胆道
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総説
脂質メディエーターを介した胆汁酸シグナル伝達系の役割
永橋 昌幸大橋 拓滝沢 一泰坂田 純小林 隆若井 俊文
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2016 年 30 巻 2 号 p. 220-227

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抄録

近年の分子生物学の進歩により,胆汁酸が特異的に作用する受容体の存在が明らかになり,胆汁酸の情報伝達物質としての役割が注目されている.脂質メディエーターであるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)の特異的受容体であるS1P2型受容体は,胆汁酸が直接作用する特異的受容体の一つであることが明らかになった.胆汁酸によるS1P2型受容体の活性化は,さらにS1P産生酵素であるスフィンゴシンキナーゼ2型(SphK2)を活性化する.胆汁酸によるS1P2型受容体およびSphK2を介したS1Pシグナル伝達系は,肝細胞における脂質代謝や糖代謝の制御に関与していることが明らかとなった.また,この胆汁酸によるS1Pを介したシグナル伝達系は,胆道癌の発育進展を促進することが報告され,様々な生理機能や病態に関与していることが分かってきた.本稿では,胆汁酸シグナル伝達系と,S1P2型受容体およびSphK2を介したS1Pシグナル伝達系の相互作用と,その病態生理における役割について概説する.

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© 2016 日本胆道学会
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