2016 年 30 巻 4 号 p. 741-748
症例は75歳,女性.閉塞性黄疸の診断で当科に紹介された.腹部CT検査では乳頭近傍の遠位胆管壁は肥厚し内腔は閉塞し,同部位の壁は全体に造影効果を認めた.一方,胆嚢には隆起性病変を3病変認めた.PTBDルートから採取した胆管胆汁の細胞診でclass Vと診断された.遠位胆管癌および胆嚢癌と診断し,手術を施行した.術中左右肝管合流部直下で切離した肝側胆管断端は異型上皮と診断された.これ以上の追加切除はせず亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後病理では遠位胆管に浸潤性胆管癌を認め,それ以外の乳頭部から胆嚢床部の肝内胆管および胆嚢まで広範囲に胆管上皮内腫瘍(BilIN)を認めた.術後抗癌剤治療を行ったが,1年10カ月後に原病死した.本症例ではBilINを基盤として遠位胆管の部位で浸潤癌となったものと考えられた.