谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
臨床検査
1.安全性試験における臨床病理検査の意義
奈良岡 準
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2021 年 2021 巻 23 号 p. 68-71

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抄録

-臨床病理検査について-

1.1 臨床病理検査の成り立ち

 臨床病理検査は、古くはギリシャ時代から尿の観察に始まり、以降体の異常を非侵襲的に知るための方法として行われてきた。安全性試験における臨床病理検査は、1960年代以降臨床病理学を主体にヒトの体外診断薬や装置を動物へ用いることから始まった。その後、1990年代になり本邦では日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 基礎研究部会のタスクフォースや日本臨床化学会 動物臨床化学専門委員会を中心に、アメリカでは米国臨床化学会(American Association for Clinical Chemistry: AACC)の動物臨床化学部門(Division of Animal Clinical Chemistry: DACC)と米国獣医臨床病理学会(American Society of Veterinary Clinical Pathology: ASVCP)を中心に、安全性試験における臨床病理検査のハーモナイゼーション(The International Harmonization of Clinical Pathology teating: IHCPT)1)などが国際的に行われ、現在の標準測定項目に至っており、臨床病理学に関わる多くの先人のご尽力により、現在の臨床病理学が体系化されてきた。

 さらには2000年以降オミクス研究や解析技術が進み、薬剤性腎障害のバイオマーカー2)がFDA、EMA、PMDAにより医薬品開発における安全性試験において利用が認められ、非臨床から臨床で使用可能な副作用バイオマーカーを産官学連携により研究開発する機運が高まってきている。

 臨床病理、臨床検査などの呼び方があるが、一般的に臨床検査は画像検査や生理機能検査などが含まれた検査を示すことから、非臨床安全性試験における血液、尿の生体試料を用いた検査は、臨床病理検査と呼んで区別しており、IHCPTなど海外でもClinical Pathologyと呼ばれていることから、本稿では臨床病理検査とする。

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© 2021 安全性評価研究会
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