日本味と匂学会誌
Online ISSN : 2424-1326
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8.脳からみた蛋白栄養状態とうま味嗜好性との関係(<総説特集>伝統食品の科学-ルーツ、おいしさ、機能-8)
鳥居 邦夫
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2007 年 14 巻 2 号 p. 153-162

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抄録

食物摂取に関わるグルタミン酸受容体は下等な動物から高等哺乳類まで共通しており、核酸関連物質であるイノシン酸などのリボヌクレオチド類の共存により味覚(うま味)の相乗的増強が生じる。これを手がかりに索餌、摂取、咀嚼、嚥下、消化吸収、代謝調節、栄養素の消費と補充のバランス、そして体液中の各栄養素の生体恒常性の維持がはかられる。特に、蛋白質の量的、質的確保は生合成できない9種の必須アミノ酸を得る上で重要であり、動植物の組織を捕食する必要がある。動植物の蛋白質を構成する20種のアミノ酸の中でグルタミン酸は20〜40%を占め、蛋白を生合成する際の細胞の基質としても最も多く、死後の自己融解により大量のグルタミン酸が生成される。当然、核酸関連物質も共存することになる。我々は食塩、グルコース、アミノ酸、核酸関連物質の中で胃の迷走神経求心性線維が、応答を示すのはうま味物質であるグルタミン酸、そしてイノシン酸やグアニル酸のみであることを見出した。この情報は食物摂取の脳での認知を生じさせ、本格的な消化吸収と代謝調節を開始する引き金と考えられる。うま味物質が食物摂取とその後の消化吸収の担い手といえよう。

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© 2007 日本味と匂学会
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