抄録
生物にとって摂食行動は、生命維持に必要なエネルギー獲得のために重要な本能行動である。他方、飽食の時代
には、食べすぎによる肥満症が問題となる。特に糖質は、嗜好性と行動強化力が高いため、過剰な摂取や間食の習慣化などの食行動の乱れを引き起こし、肥満を誘発する。また、一度、形成した食行動の乱れを制御することは難しく、肥満治療を困難にする要因となる。したがって、糖質嗜好性制御メカニズムを理解することは、肥満患者の乱れた食行動の病態生理を理解するために重要である。本稿では、肥満治療における問題点を指摘した後、長寿遺伝子として知られているSIRT1 の糖質嗜好性制御メカニズムついて紹介したい。