天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
55
会議情報

トリテルペン環化酵素:基質のメチル基が環化フォールデングや多環化反応へ及ぼす影響~ラノステロール及びβ-アミリン合成酵素を中心として~
星野 力千葉 彬文阿部 奈緒美花岡 正樹山口 雄生宮原 悠里高橋 一成
著者情報
会議録・要旨集 フリー HTML

p. Oral30-

詳細
抄録

1.序論

 鎖状分子のスクアレン(SQ)や2,3-オキシドスクアレン(OXSQ 1)を位置および立体特異的に炭素−炭素結合を一挙に形成して多様な多環性骨格を構築するトリテルペン環化酵素の研究は古く,半世紀以上経過しているが未だ解明されてない点が多々存在する。4環性骨格のラノステロールを合成する酵素の基質認識機構に関しては、1960年代後半から1990年代前半にかけてvan TamelenやCoreyらの精力的な研究が報告されてきた。1955年スイスのETH school (Arigoniら) は、基質がchair/boat/chair/boat型で折り畳まれ、17α-側鎖を持つprotosteryl cationが生成され、その後backbone転位が起きラノステロール骨格が構築されると提唱した(Scheme 1a)。1)1991年Coreyは20-oxa アナログの酵素反応を行った結果、中間体protosteryl cationの17位の側鎖は、β配向であると報告した。2)この実験結果は、chair/boat/chair/chair で進行することを示唆している。しかし、Coreyらはこのconformationを指摘しなかったためか、専門書等でD環形成は未だboat型であると間違って記載されている。3) 2005年Arigoniらは、Coreyらの結果を基にしてchair/boat/chair/chairである可能性を指摘(事実上修正)したが,4)

依然として間違いが見られる。5)この現状を鑑み、我々は、この歴史的な背景とともにScheme 1bのfolding conformationが正しいことを論文のなかで特に明示した。6)この事例が示すように、基質アナログによる研究は反応機構解明に向けて重要なツールとなっている。また、基質のメチル基が多段階反応にどのような影響を果たすのかも古くから研究されてきた。1968年van Tamelenらは15位のMe(Me-28)が欠損5しても、正常なconformationが進行し、18-norlanosterol 10が生成すると報告した。7)1992年Coreyらは、27, 28- bisnorOXSQ 6の環化物としてchair/chair /boat型で進行した6/6/5+4 11の4環性化合物を報告し、van TamelenのMe-28のノル体の結果と合わせてMe-27が正常な環化反応に最も重要であると報告した(図1)。8)しかし、Me-27のみが欠損したOXSQ 7やMe-29が欠損したアナログ8の酵素反応は未だ報告されてない。我々は、7及び8の環化産物を同定し、Me基の重要性について更に検討した。6)また、嵩高いホモメチル基(Et基)が置換したアナログ9も合成し、その嵩高さの重要性についても検討した。我々は植物に普遍的に存在するβ-アミリン合成酵素(ミドリサンゴ由来)を多く発現する系を確立し、精製酵素を簡便に得ることに成功したので、9)24-, 30-ノルアナログを合成してβ-アミリン環化反応に及ぼすメチル基の影響も検討した。β-アミリン合成酵素を用いたアナログの研究は、ラノステロールやホペン合成酵素10)と比較して立ち遅れている。膜タンパク質のため、活性型酵素として精製することが困難であったことが要因である。b-amyrinはchair/chair/chair/boat/boatのconformationで生成される(Scheme 2)。

2.ラノステロール合成酵素

化学合成した基質アナログ7, 8を豚肝臓ミクロソーム画分から酵素を部分精製し反応を行った。7からは12と13(9:1)が得られた。12は正常なchair/boat/chair/chair foldingで13は異常なchair/chair/boat foldingで環化した産物である。また、8

(View PDFfor the rest of the abstract.)

著者関連情報
© 2013 天然有機化合物討論会電子化委員会
前の記事 次の記事
feedback
Top