天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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マクロラクタム配糖体抗生物質クレミマイシンの生合成研究
天貝 啓太高久 亮磨工藤 史貴江口 正
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p. Oral31-

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抄録

クレミマイシンは放線菌Streptomyces sp. MJ635-86F5が生産する19員環マクロラクタム配糖体抗生物質で、β-アミノ脂肪酸スターター部位を含む二環性アグリコン骨格や、希少糖であるシマロースが結合している構造となっており、メチシリン耐性菌を含むグラム陽性菌に対して幅広い抗菌活性を有することが知られている (Fig. 1)[1]。当研究室では前年度、前々年度に本討論会にて報告したように、既にビセニスタチンやインセドニンといったβ-アミノ酸含有型マクロラクタム抗生物質の生合成遺伝子クラスターを取得している。そしてこれらのスターター基質はグルタミン酸から生合成され、天然の保護基 (アミノ酸) によってβ位のアミノ基が保護された後にアグリコン骨格構築のためのポリケチド合成酵素 (PKS) へローディングされることを見出している[2]。一方、クレミマイシンの予想スターターは3-アミノノナン酸であり、これが天然のアミノ酸から誘導されるとは考えにくく、その生合成機構に非常に興味が持たれた。そこで、β-アミノ酸含有型マクロラクタム生合成マシナリーを応用した新規抗生物質の創製も見据え、クレミマイシン生合成機構の酵素・遺伝子レベルでの解明を目指し、研究を展開した。その結果、クレミマイシン生合成前駆体ならびに遺伝子クラスターに関する知見、さらにはスターターである3-アミノノナン酸のアミノ基導入機構について、非常に興味深い結果を得ることができたので報告する。

1. 安定同位体標識化合物を用いた投与実験

 まず始めにクレミマイシンの生合成前駆体に関する知見を得るため、安定同位体標識化合物を用いた投与実験を行った。その構造からポリケチド化合物であることが予想されたため、ポリケチド生合成の伸長基質として一般的に使用される生合成前駆体の安定同位体標識化合物、[1-13C]酢酸ナトリウム、[1,2-13C2]酢酸ナトリウム、[1-13C]プロピオン酸ナトリウムと、d-[6,6-2H2]グルコースをそれぞれクレミマイシン生産菌培養液中に投与し、得られたクレミマイシンを13C-NMR, INADEQUATE, 2H-NMRで解析した。その結果、クレミマイシンのアグリコン骨格は11個の酢酸ユニット, 2個のプロピオン酸ユニットで構築され、シマロースの生合成前駆体はd-グルコースであることが明らかとなった。また、プロピオン酸ユニットが生合成前駆体として導入される部分では、酢酸がクエン酸回路にて変換されたコハク酸を経由して導入されることを、[2,3-2H4]コハク酸を用いた投与実験で明らかとした[3] (Fig. 3)。さらにクレミマイシン生産菌に予想スターターである3-アミノノナン酸の重水素標識化物を投与したところ、クレミマイシンの生産量の減少が見られたが、LC/MS解析により重水素が取り込まれたクレミマイシンを検出したことから、3-アミノノナン酸がクレミマイシン生合成におけるスターターであることが明らかとなった。また、この部分には標識化酢酸やプロピオン酸が取り込まれたことから、クレミマイシンのβ-アミノ酸スターターユニットは、アミノ酸から誘導されるのではなく、PKSによって伸

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© 2013 天然有機化合物討論会電子化委員会
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