天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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ディデムナケタールBの全合成と完全立体構造決定
武藤 崇史関根 久美子不破 春彦佐々木 誠
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p. Oral39-

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抄録

1.序論

 ディデムナケタールA–C(1–3, Figure 1)は、Faulknerらによりパラオ産のDidemnum属ホヤから単離・構造決定された複雑な構造を有する海洋天然物である1,2)。当初、1及び2は天然物と考えられていたが、のちに生物試料をメタノール中で長期間保存したことで、天然物である3が分解物して1及び2が生成したことが判明した2)。ディデムナケタール類の平面構造は詳細な二次元NMR解析により決定され、さらに2の全立体構造は天然物の分解・誘導化実験、キラル異方性試薬の適用、部分構造に対するX線結晶構造解析を組み合わせて提唱された3)。化合物1及び2は顕著なHIV-1プロテアーゼ阻害活性を示すため(IC50値 2及び10 μM)1)、これまで全合成のターゲット分子として興味を集めてきた。

 昨年Tuらにより1の提出構造式の全合成が初めて報告されたが、合成品のNMRスペクトルデータが天然物のそれらと一致せず、Faulknerらの提出構造式に誤りがあることが強く示唆された4)。今回、我々は2の提出構造式の全合成と部分構造に対するPGME法5)の適用を含む詳細なNMR解析を独自に行うことで、提出構造式のC10–C20位部分の絶対立体配置の帰属に誤りがあると結論し、本天然物の構造改訂を行った。さらに改訂構造式の全合成を達成し、そのNMRスペクトルデータが天然物のそれらと良い一致を示したことから、本天然物の完全立体構造決定に初めて成功したので、その詳細を報告する。

2.ディデムナケタールBの提出構造式2の全合成

合成計画:化合物2は、最終段階におけるアルデヒド4とビニルヨージド5との野崎−檜山−岸(NHK)反応6)によるC21–C28側鎖導入によって得られると考えた(Scheme 1)。化合物4はアルコール6からビニロガス向山アルドール反応7)によるC1–C5部分の構築とC5, C7, C8, C11位ヒドロキシ基のアシル化により合成することを計画した。化合物6はEvans syn-アルドール反応8)によってアルコール7から誘導することとした。化合物7はヨウ素体9から調製できるアルキルボレート8とエノールホスフェート10との鈴木−宮浦反応9)と続く酸触媒を用いた熱力学支配条件下でのスピロアセタール化10)を行うことで立体選択的に構築できると考えた。

ディデムナケタールBの提出構造式2の全合成:文献既知のラクトン1111)を出発原料とし、5段階でスルホン14へと誘導した後、別途調製したアルデヒド15とのJulia–Kocienski反応12)によりオレフィン16を得た(Scheme 2)。続いて、Sharpless不斉ジヒドロキシ化13)によりC11位及びC12位の不斉中心を導入した後、2段階で保護基の変換を行いアルコール18とし、さらに2段階でヨウ素体9へと変換した。

 次に化合物9と別途調製したエノールホスフェート1010a)との鈴木−宮浦反応を行い、エノールエーテル19を収率84%で得た(Scheme 3)。続いて、シリル基の除去と酸処理により熱力学的に有利なスピロアセタール20を単一の立体異性体として得た。化合物20の相対立体配置はNOE実験により確認した。化合物20から4段

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© 2013 天然有機化合物討論会電子化委員会
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