天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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エリスリナアルカロイドの合成研究
海原 浩辰吉野 友美下川 淳北村 雅人福山 透
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p. Oral42-

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抄録

【背景•目的】

 マメ科Erythrina属植物より単離されるエリスリナアルカロイドは、主な生物活性として経口投与によるクラーレ様の筋弛緩作用を示すことが知られており、古来より様々な民間療法に用いられてきた化合物群である。これらは、5位スピロアミン構造を中心としたA〜D環からなる4環性骨格を有しており、古くから多くの合成化学者の興味をひきつけてきた。我々はその特異な構造に興味を抱き、生合成経路1を模倣した独自の合成戦略を用いて効率的に主骨格を構築し、種々の類縁体合成へ適用することを計画した。そこで、最初の標的化合物として代表的なエリスリナアルカロイドであるerythraline (1) 2を選択し、その合成研究に着手した。

【逆合成解析】

 我々の合成計画をScheme 1に示す。1は2の酸化段階を調整することで合成することができるものと考えた。2のスピロ4置換炭素は、3のラクタム窒素原子からの渡環マイケル付加反応によって構築することとした。3をフェノールの酸化反応によって導くこととすると、4がその前駆体として適当であると考えられる。4は、5と6との鈴木–宮浦カップリング反応と、引き続くラクタム化で合成可能であると考えた。なお、光学活性な5を用いることにより、11位の酸素官能基を足がかりとした4に対する面選択的な反応が進行すれば、本合成経路は不斉全合成に適用可能であると考えられる。

【ラセミ体全合成】

 まずは鍵となるフェノールの酸化と引き続く渡環マイケル付加反応の検討を行うため、11位に酸素官能基を持たない化合物を用いて合成を行うこととした。市販のカルボン酸7の保護及びフェノール性水酸基の保護基の変更と、引き続く宮浦ホウ素化を経て、ボロン酸エステル9を調製した (Scheme 2)。

 続いて、ピペロナール (10) への窒素官能基の導入及び保護、そして芳香環のヨウ素化により、ヨウ化アリール中間体 12 を得た(Scheme 3)。12と9との鈴木–宮浦カップリング反応と、続くメチルエステルの加水分解によりカルボン酸13とした。次に13のBoc基を除去し、生じたアミノ酸の分子内縮合反応とメシル基の除去を行うことで鍵反応前駆体のフェノール14を合成した。14に対する酸化反応を種々検討した結果、塩基存在下、一重項酸素酸化を行うことで、フェノールの酸化と渡環マイケル付加反応が一挙に進行し、天然物の主骨格を有する16を単一のジアステレオマーとして収率良く得ることに成功した。続いて、脱水反応により不飽和ラクタム17へと導いた後、文献既知の変換3を行うことで、erythraline (1)のラセミ体全合成を達成した。

【軸不斉を制御した鍵反応前駆体の構築】

 ラセミ体全合成を達成したので、次に不斉全合成に向けて、11位に不斉点を有する基質を用いて検討を行った(Scheme 4)。文献既知の不斉へンリー反応を用いて調製した光学活性なニトロアルコール18 4を還元し、生じたアミノアルコールの窒素原子と酸素原子を順次保護することにより、19を得た。19の位置選択的な臭素化を行うことで臭化アリール20を合成した。20と9

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© 2013 天然有機化合物討論会電子化委員会
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