天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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アミノグリコシド抗生物質の生合成におけるラジカル活性化を契機とする修飾酵素反応機構
工藤 史貴星 正太Sucipto Hilda江口 正
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p. Oral16-

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抄録

 アミノグリコシド抗生物質は、ストレプトマイシンやカナマイシンなどが有名であり、古くから臨床医学上重要な抗生物質として使用されてきた。聴覚障害や腎毒性など無視できない副作用もあり、その使用は制限されているものの、細菌のrRNAへの特異的結合による抗菌活性は極めて重要である。その化学構造は、アミノサイクリトールに様々なアミノ糖やデオキシ糖が連結した疑似オリゴアミノ糖であり、組み合わせにより多種多様なアミノグリコシド抗生物質が知られている(Fig. 1)。

 その生合成研究は、当研究グループをはじめ、イギリス、ドイツ、韓国の研究グループなどにより酵素遺伝子レベルで進められてきた1-3。2-デオキシストレプタミン(2DOS)をアミノサイクリトール部位に有するブチロシンとネオマイシンの生合成に関しては、現在までに、ほぼ全ての生合成酵素の機能解析がなされている4。すなわち、2DOS、パロマミン、ネアミン、リボスタマイシンなどの共通的生合成中間体は、類似骨格を有するアミノグリコシド抗生物質の遺伝子クラスターに保存されている酵素により構築されることが明らかとなっている(Fig. 1)。したがって、この抗生物質群のさらなる構造多様性は、それぞれの抗生物質の生合成遺伝子クラスターにコードされる特徴的な酵素により生じるはずである1。そのようなアミノグリコシド抗生物質の構造多様化に関わる酵素解析を進め、ネオマイシンとカナマイシンは、興味深いラジカル活性化を契機とする酵素反応により、成熟型へと変換されることが明らかとなったので報告する。

Fig. 1. 2-デオキシストレプタミン(2DOS)含有型アミノグリコシド抗生物質の生合成経路。図中のKanJとNeoNがラジカル活性化を契機とした修飾反応を触媒する。

<ネオマイシン生合成の最終段階>

 ネオマイシンは、5”’位のエピマーの関係にあるBとCの混合物として市販されているが、主成分はネオマイシンBである(Fig. 1)。本討論会でも既に報告したが、ネオマイシンCを構築するための全ての生合成酵素の機能解析に成功しており5、また、ネオマイシンCからネオマイシンBへのエピメリ化反応は、ネオマイシン生合成遺伝子クラスターに特徴的にコードされるラジカルSAM(S-アデノシルメチオニン)酵素NeoNにより触媒されることが分かっている6。ラジカルSAM酵素は、活性部位中の還元型の[4Fe-4S]1+がSAMを還元的に開裂させることで5’-デオキキシアデノシルラジカルを発生させて、様々なラジカル反応を触媒する酵素として知られている。この興味深いラジカル酵素反応機構を解明するために研究を進めた。

 本研究ではまず、NeoN反応における基質と生成物の化学量論を明らかにすることにした。生成物の定量分析の結果、ネオマイシンBと5’-デオキシアデノシンが等モル量生成することが明らかとなった。このことから、SAMから生じる5’-デオキシアデノシルラジカル(5’-dA•)が基質の水素を引き抜いて、ラジカル中間体が生成し、これを酵素内の何らかのアミノ酸残基が水素原子を供給してエピメリ化が進行

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© 2014 天然有機化合物討論会電子化委員会
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