天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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ヤーコン葉に含まれるセスキテルペンラクトン類の抗ガン活性に関する研究
北井 友里加田村 啓敏
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p. Oral31-

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抄録

 1970年以降、日本人の死亡率第1位はがんとなり、現在に至るまでがん死亡率は増加の一途を辿っている。がんは老化や生活環境因子が深く結びついた疾患であると言われており、今後、人口の急速な高齢化とともにがん死亡率は増加し続けると見込まれ、依然としてがんは国民の健康と生命にとって重要な問題である。1

 我々はこれまでに、食を通じたガン予防の観点から、Raji細胞を用いたEBV-EA活性化試験より抗発がんプロモーター活性を示す成分として、ヤーコン葉に含まれるセスキテルペンラクトン(SLs)であるenhydrin(1)、uvedalin(2)、sonchifolin(3)の単離•同定に成功した。2さらに、これら化合物はHeLa細胞(子宮頸癌細胞)に対する細胞増殖抑制活性を示し、その細胞毒性発現機構としてcaspase-3/7活性依存的にアポトーシスを誘導することを明らかにした。3

 本討論会では、ヤーコン葉から細胞毒性活性を示す新規化合物であるダイマーSLsのenhydrofolin(5)とuvedafolin(6)の単離に成功したので、化合物6の構造と、これら化合物の細胞毒性関連性、及び、細胞毒性の発現機構について報告する。

enhydrin(1) uvedalin(2) sonchifolin(3) polymatinB(4)

enhydrofolin(5) uvedafolin(6)

Figure 1. Structure of sesquiterpene lactones from yacon

【ヤーコン葉より単離したsesquiterpene lactones】

 ヤーコン乾燥葉(1.6kg)のアセトン抽出物(40.6g)に70%MeOHを加え、70%MeOH可溶画分を回収し濃縮した。70%MeOH可溶画分(22.3g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて30分画後、SLs高含有量のフラクションを結晶化することにより純度95%上の化合物1, 2, 6の結晶をそれぞれ1300mg(0.008%)、100mg(0.006%)、110mg(0.007%)ずつ得た。その他の物質は、分取TLC及びHPLC(ODSカラム)を組み合わせ、純度95%以上の化合物3, 4, 5をそれぞれ25mg(0.002%)、20mg(0.001%)、30mg(0.002%)ずつ得た。

【uvedafolinの構造解析】

 新規化合物uvedafolin(6)はESI-TOF-MSスペクトルより分子式C43H53O15と推定された。IRスペクトルから水酸基(3536cm-1)の存在、及び、NMRスペクトルパターンより、既知SLs類似のmelampolide型骨格を有する2量体化合物であると考えられた。1H-1H COSY, HMBCスペクトルより6の平面構造はFig.2に示す2つの部分構造の存在が示唆された。AとBを結合する架橋構造中の四級炭素C-2”(δC 76.1)の酸素原子の先には1H核と13C核の存在が確認されず、C-2”の隣には-OH基の存在が帰属できた。6は化合物2のC-8位上angelate側鎖上のエポキサイドと、化合物3のC-10位上メトキシ基とがエステル結合することにより架橋構造を形成したダイマーSLsであると決定した。

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© 2014 天然有機化合物討論会電子化委員会
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