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1. 序論
放線菌が生産するteleocidin B(1)は強力なprotein kinase C(PKC)活性化作用を示す発癌プロモーターである(図1)1,2。PKCは細胞内のシグナル伝達を担うリン酸化酵素であり、その活性化因子の多くは発癌プロモーターとして作用するが、bryostatinやphorbol esterの様にPKSの活性化後、細胞内挙動を制御することで抗癌活性を示す天然物も知られている3。さらに、いくつかのPKC活性化因子は、抗アルツハイマー病活性、抗HIV活性を示すことから、医薬品のリード化合物としても重要である。1は特徴的な環状テルペノイド構造と9員環ラクタム構造を有し、これまでに様々なteleocidin誘導体の単離4、合成研究5が行われ、PKC活性化作用の検討が行われてきた。一方で、teleocidin類の生合成に関しては、9員環ラクタム構造、(-)-indolactam(2)部位が、L-tryptophanとL-valineから合成され、テルペノイド部位は非メバロン酸経路により供給されることが、化学変換や放射性同位体標識化合物の投与実験により明らかとされている6。また、1の生合成中間体であるlyngbyatoxin A(3)の生合成研究において、非リボソーム型ペプチド合成酵素 LtxA、ペプチド鎖の環化を行う酸化酵素LtxB、プレニル基転移酵素LtxCが関与することが見出されている(図2)7。1は、3のテルペノイド部がメチル化された後に、環化反応が進行し、生成すると予想される。しかし、環状テルペノイド構造の形成に関わる生合成酵素は未だ不明であった。そこで本研究では、teleocidin類の全生合成酵素の同定と、in vitroにおける酵素機能解析やX線結晶構造解析による生合成酵素の触媒機構の解明を目指した。
2. Teleocidin B生合成遺伝子クラスターの同定
Teleocidin B生合成遺伝子クラスターを探索するため、Streptomyces blastmyceticus NBRC 12747のドラフトゲノムシークエンスからプレニル基転移酵素LtxCをクエリーとしてBLAST検索を行った。その結果、LtxCと40%の相同性を有するタンパク質をコードする遺伝子(tleCと命名)をゲノム中に見出した。tleCの遺伝子上流には、LtxAと49%、LtxBと47%の相同性を有するタンパク質をコードする遺伝子が存在しており、それぞれtleA、tleBと命名した。結果として我々は、teleocidin生合成遺伝子クラスター(tleクラスター)としてtleABCを含む、23.3 kbのコンティグを得た(図3)8。
本遺伝子クラスターがteleocidin類生合成に関与することを証明するため、tleクラスターを導入した放線菌Streptomyces lividans TK21株を、teleocidin類生産培地にて培養したところ、遺伝子特異的に3を主生成物として生産した。したがって、tleABC遺伝子はteleocidin類の生合成に関わることが明らかとなった8。また、この株では1が生産されないことから、テルペノイド部のメチル化、環化関連遺伝子はtleクラスター外部に存在すると考えられた。
図3 Teleocidin生合成クラスターと周辺遺伝子
3. プレニル基転移酵素TleCの機能解析
プレニル基転移酵素TleCはGPPのC-3位からインドール環のC-7位への求電子置換反応を触媒する。このようなプレニル基転移反応は逆プレニル化反応と呼ばれる。これ
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