天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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[4+2]環化付加反応によるスピロテトロン酸形成を伴うポリケタイド大環状化機構の解明
橋本 拓哉新家 一男広川 貴次池田 治生西山 真葛山 智久
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p. Oral30-

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抄録

はじめに

 スピロテトロン酸化合物は放線菌からのみ単離されるポリケタイド化合物群であり、スピロ炭素により連なったテトロン酸構造と6員環、およびC−C結合のみから成る大環状骨格に特徴づけられる(図1左)。これらの化合物はその特徴的な分子骨格から、ユニークな生物活性を示すことがこれまでに報告されてきた。この特徴的なスピロテトロン酸骨格は、図1に示す分子内 [4+2] 環化付加反応によって形成されることが提唱されている(図1右)。しかしながら、これまでに多くのスピロテトロン酸化合物の生合成遺伝子クラスターが取得されたにも関わらず、[4+2] 環化付加反応を担う酵素は発見されず、その存在すら不明であった。今回、スピロテトロン酸化合物であるversipelostatin(VST)1-4の生合成遺伝子クラスターを同定し、さらに、わずか142アミノ酸残基から成る機能未知酵素が分子内 [4+2] 環化付加反応を触媒してスピロテトロン酸骨格を形成することを明らかにした5

異種発現によるVST生合成遺伝子クラスターの同定

 まず、VST生合成遺伝子クラスター領域の推定のため、VST生産菌であるStreptomyces versipellis4083-SVS6株のドラフトゲノムシーケンスデータを取得した。得られたシーケンスデータを精査し、ポリケタイド合成酵素遺伝子群をクエリーとして生合成遺伝子クラスターを探索した結果、108 kb にわたる推定VST生合成遺伝子クラスター領域を見出した(図2)。次に、BAC(細菌人工染色体)を用いて構築した4083-SVS6株のゲノムライブラリーから、推定VST生合成遺伝子クラスターの全長を含むBACクローンを取得した。取得した推定遺伝子クラスター領域をファージ由来のインテグラーゼを利用して放線菌Streptomyces albus J1074株染色体へ導入し、その培養抽出物をLCにより分析したところVSTが検出された。以上、VSTの異種生産に成功するとともに、VST生合成遺伝子クラスター全長を同定することができた(図3)。

[4+2] 環化付加反応を行う遺伝子の探索

 取得した遺伝子クラスターを既知のスピロテトロン酸化合物の生合成遺伝子クラスターを詳細に解析して比較し、すべてに共通して存在する遺伝子を探索したところ、429 bp の小さな機能未知遺伝子vstJを見出した(図4)。VstJは既知のタンパク質と有意な相同性を示さなかったが、これらのホモログ間で30 %程度の相同性を示した。VstJの機能を明らかにするため、VST生合成遺伝子クラスター異種発現ホストを用いて、vstJの遺伝子破壊株を作製した。その培養抽出物のLCによる分析の結果、遺伝子破壊株ではVSTの生産は失われ、代わりに生合成中間体と考えられる化合物1が蓄積した(図5)。MSおよび各種NMRスペクトルから、化合物1は共役ジエンと末端オレフィンを有する構造であることが判明した(図5)。

VstJの in vitro解析

 得られた1に対してVstJの組換え酵素を用いてin vitroの機能解析を行った結果、VstJは化合物1に対して [4+2] 環化付加反応を触媒し、VSTと同一の立体化学を持つ37-デオキシVSTアグリコン2のみを与えることがLC-MSおよびNMRによる解析から明らかとなった(図6)。意外なことに、非酵素

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